高齢者の山登り、登山って本当に体にいいの?メリット・デメリットまとめ

自然の中で身体を動かすと、心身ともに解放された気分になるものです。幅広い世代で山登りが人気のアクティビティである理由は、それが適度な運動であることに加え、日本の良さ、美しさが再認識できるからではないでしょうか。

山岳ガイドとして、初心者からベテランまで、多くの人々を山頂に導いてきた古谷聡紀さんに、これから登山を始めようという人に向けて、登山のすばらしさと楽しみ方を解説してもらいます。

登山って本当に身体にいいの?

最近は「山ガール」と呼ばれる若い世代の女性が登山ブームを牽引しているように言われています。とはいえ今も昔も登山人口の中心は私たち大人世代。人生経験が豊富なほうが、山の魅力がより深く感じられるからなのでしょう。

登山ブームはなぜ続く?

登山の魅力は多岐に渡ります。 自然のなかで素晴らしい景色を眺め、下界とは離れた特別な時間が持てること。山登りという共通の話題や目的を通じて新しい出会いがあること。経験を積むたびに技術が進歩すること。頂上を目指すという明確な目標が持て、達成感が味わえること。運動をすることで健康になることなどが挙げられます。

国土の6割以上が山である日本には各地に素晴らしい山があります。「日本百名山」という言葉をお聞きになったことがあると思います。それらの山に登ることを目標にすれば、日本各地を訪れ、知らない土地を旅する楽しみが生まれます。さらにステップアップして海外の名峰にまで足を延ばしていくことも可能です。

これだけたくさんの魅力がある山登り。多くの人が続けていることもうなづけます。

登山は本当に健康によいのでしょうか

いろいろ挙げた登山の魅力の中のひとつ、「運動をすることで健康になる」ことに注目してみましょう。 身体を動かすのだから、当然健康にいいと思っている人も多いでしょう。もちろん肉体的、精神的に、山を歩くことで身体にプラスになることはたくさんあります。

一方で、山では膝を痛めたり、ねん挫をしたり、ケガをする危険もあります。プラス面だけでなく、マイナスになる可能性も考えられるのです。特に筋力を含めた体力全般、柔軟性が衰えてくる世代では、その可能性は高くなります。

では、健康のためになる登山はどのようなものなのでしょうか。

登り方が大切です

私が山で出会う登山者の中には、時々息を切らせながら登る人を見かけます。「ゼーハー、ゼーハー」言わせながら歩く姿は、かなりきつそうです。

地域の山岳会やハイキングクラブなどで、ベテラン登山者のペースに付いていくために必死に登っているのでしょう。昔の精神鍛錬の感覚で登山する人は確かにいます。息を切らしながらの登山は、心肺機能の強化になります。その意味では身体にいいとも言えますが、楽しくなければ続ける気にならないでしょう。

登山が健康に良いのは、有酸素運動を続けることで脂肪を燃焼させ、生活習慣病の予防に効果があることです。実は「ゼーハー」登りは有酸素運動ではなく、元々筋肉に蓄えられていたエネルギーを使っているだけで、脂肪を燃焼させていません。有酸素運動は苦しくてはいけないのです。

では苦しくない登山とはどのようなものなのでしょうか。具体的にお話ししましょう。

身体によい山登りとは?

楽しく山に登ることが、身体によい山登りの基本です。具体的にはどんな登り方なのでしょうか。

登山を有酸素運動にする

私が案内する登山教室では、1時間に1回くらいしか休憩は取りません。歩き始める前にそれを伝えると「私はいつも15分に1回休憩しています。もっと休憩を取って下さい!」とか「1時間も歩き続けるのはキビシイですよ!」と言われます。

私が1時間に1回しか休憩を取らないのは、1時間に1回休憩をとればいいようなペースで登るからです。呼吸を乱さず、たえず深呼吸をしながら登ります。そうすれば苦しくないので、1時間歩き続けても余裕を持って歩くことができるのです。

これは心拍数が1分間に110~130回程度のファットバーン(Fat Burn)と呼ばれる、もっとも脂肪が燃焼できるペースなのです(年齢、個人によって差があります)。

おしゃべりができる速さで歩く

イメージとしては、歩きながら、なんとかおしゃべりができるくらいのペースです。登ったり休んだりを頻繁に繰り返し、心肺に負荷を掛けたり、休ませたりするのではなく、一定の軽い負荷を掛け続けるのが、一番効率の良い有酸素運動になります。

水分やエネルギーを補給するため、またリュックサックが肩を圧迫するのを防ぐために1時間歩いたら、休みをとるようにしますが、実際はもっと長く歩き続けることは可能です。このペースはかなりスローです。人によっては遅すぎると感じる人もいるかも知れません。ただゆっくり歩くことで登りでもきつく感じないし、周りの景色を見る余裕もできます。

これこそ登山の一番の効用

せっかく気持ちのよい自然の中にいるのだから、周囲の景色を見て、季節を感じる余裕がなければ、山に来る意味がありません。ゆっくり歩いて有酸素運動を続けることは健康によいのはもちろんのこと、精神衛生上もたいへん好ましいことです。

これまで山登りで辛い思いしかない人、前を歩く人の足しか見てこなかった人は、きっと登り方を間違っていたのです。息が上がらないゆっくりしたペースで歩くこと。「スローハイキング」こそが、山登りを楽しみ、さらに身体にもよい、もっとも大切なことなのです。